公開講演会 「青空のもとで生きる権利-千葉川鉄公害訴訟一審判決から30年」
(社会学部創立60周年記念/共生社会研究センター共同開催)
INFORMATION
1975年に提訴され、1992年に和解成立した千葉川鉄公害訴訟は、川崎製鉄千葉製鉄所が排出する汚染物質により健康を損なわれた被害者たちが、環境基準を超える汚染物質を排出することに対する差止と、被害に対する賠償とを求めたものであり、大気汚染と公害患者の病気との法的因果関係を認め、損害賠償を命じた1988年の一審判決は、同時期に進行していた大阪西淀川、川崎、水島などの大気汚染訴訟の帰趨にも重要な意味を持つこととなった。そのほかにも、憲法13条、25条で保障された人格権を根拠に第6高炉の建設差止を求めたこと、因果関係の立証をめぐって裁判における科学(とくに疫学)の役割が問われたこと、そして環境行政が後退する中で勝訴判決をかちとったことなど、注目すべき点の多い裁判である。
共生社会研究センターは本訴訟に関する資料を所蔵している。また、社会学部現代文化学科には「環境とエコロジー」「都市とコミュニティ」の研究領域が設定されており、本訴訟はこの研究領域と密接に関わるものである。こうしたことから、一審判決30周年を迎える機会に改めてその意義を検討したい。
この講演会では、この裁判で弁護団事務局長を務めた高橋勲弁護士をお招きし、裁判を進める中で直面した課題、被害者の苦しみ、裁判にかかわったたくさんの市民や専門家について、そして裁判の今日的意義について、ご経験を踏まえてお話しいただく。また、大阪?西淀川大気汚染訴訟の資料を所蔵し、全国の公害資料館をつなぐ「公害資料館ネットワーク」の中心機関である公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)の林美帆氏、そして東京大気汚染訴訟?千葉川鉄公害訴訟の記録の整理にかかわり、公害の記録を大学教育の現場に活かす実践をされている岩松真紀氏(明治大学講師)にも、それぞれの立場からご発言いただく。
講師
弁護士(千葉中央法律事務所)
高橋 勲 氏
1967年4月に弁護士登録(千葉県弁護士会)し、1971年に千葉中央法律事務所を創設、1984年には千葉県弁護士会会長をつとめた。また、この間、日本弁護士連合会公害対策委員会委員、全国公害弁護団連絡会議幹事長などを歴任、2001年日本弁護士連合会副会長となる。千葉川鉄公害裁判をはじめ、労働裁判、住民運動の裁判を多数手がけている。
公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)研究員、博士(文学)
林 美帆 氏
公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)研究員。博士(文学)。専門は日本近現代史。あおぞら財団の付属施設である西淀川?公害と環境資料館(エコミューズ)の担当として、資料館の運営だけでなく、環境教育および公害教育を担当し、西淀川地域での ESD(Education for Sustainable Development))にも取り組む。公害資料館ネットワークの事務局。佛教大学非常勤講師。主な著作に除本理史?林美帆編著『西淀川公害の 40年維持可能な環境都市をめざして』(ミネルヴァ書房、2013)などがある。
明治大学非常勤講師
岩松 真紀 氏
東海大学などでも非常勤講師をつとめる。2016年、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了。博士(農学)。1987年、北海道大学薬学部卒業。薬剤師。専門は社会教育学、環境教育学。学位論文は、「戦後農山村地域における健康学習運動の成果と可能性—長野県松川町の事例を中心に—」であり、住民の主体的な学習に注目した。住民の主体的な学習?活動という共通性から、健康にかかわる学習以外にも、公害教育、こども食堂、九条俳句訴訟などに研究の関心がある。現在、東村山市公民館運営審議会委員。近著に「食を通して暮らしをつくり守る『こども食堂』」(佐藤一子?千葉悦子?宮城道子編著『〈食といのち〉をひらく女性たち』農山漁村文化協会、2018)などがある。
詳細情報
名称
(社会学部創立60周年記念/共生社会研究センター共同開催)
対象者
申し込み
- 事前申し込み 不要
- 参加費 無料